奏法についての考察

  • 奏法についてご質問がありましたので、わたしが演奏しながら、また教えながら考えていることを述べてみたいと思います。

どんな音を目指すのか

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鐘の音

クラシックでは鐘の音を目指しています。歌では「ベルカント」という言葉を良く聞くと思います。美しい音という意味ですが天に向かう音を目指していたのですね。丁度鐘を鳴らすように声をカーンと当て、当たったらその響きにゆだねて音を増幅していく方法です。楽器も同じで、響いたらそれにゆだねて音を鳴らしていくと美しい音を出すことができます。

脱力の必要性

鐘を打って鳴らそうとするとき、ぎゅっとバチを握ったり、打ったときに鐘にずっとバチをくっつけていたら鐘は響きません。軽く握ったバチを腕をばねのように使って打ち後は鐘の鳴るにまかせると美しく響きます。
ピアノの弦もハンマーで打っている訳です。打つまでの力はバネのように、そして打った瞬間は脱力して弦の響きに音をゆだねると、音は空間を広がって伸びていきます。
ゆだねるということは自分の力でいつまでもコントロールしないということです。つまり脱力がとても大事なポイントになるのです。

  • 脱力すると
    良い響きを得るだけでなく・・・
    • 疲れません。
    • 自分の音を聴くことができます。音が自分から離れるので客観的に聴けるのです。
    • 速いパッセージを弾いたり、離れたところに飛んだり、連打、トリルすべてのテクニックが容易になってきます。

方法  

まずは座り方です。これができていないと腕の付け根で腕の重みを支えなければならないので脱力できません。

  • 赤ちゃんはぺたんと床に座り、どこにも力が入っていません。どの段階で座り方が下手になってくるのかな?と思いますが、もう幼児期には下手をするとあの座り方はできなくなってしまうようです。
    • 椅子にしっかり腰をかけます。股関節を開き骨盤の間に落とします。股関節を閉じてその上に座ってしまうと不安定で体に力が入ります。骨盤の先端の尖ったところが椅子に当たり自由に前後に動けるようにします。と書いても実際にはわかりにくいかもしれません。では椅子に座ったら椅子の両脇に足を開き会陰を一回椅子につけてみてください。骨盤を起こすわけです。体を少しゆすって肩の力が抜けるように意識してみます。体が安定したら足をそっと戻しますが膝頭はぴったりつけません。膝は自由にして下さい。馬にまたがっている姿勢は丁度いいかもしれません。ゆれても自由でしかも安定しています。
    • 関節を動かして弾く方法
      ピアノを弾くのに脱力が必要な手の関節は手首、肘、肩です。肩の関節を自由にするためには胸鎖関節つまり首の付け根のところも意識します。そこが自由でないと肩は動きません。すべての関節が自由に動くかどうか試してください。。次に指を鍵盤につけたまま体に近い関節から延ばしていきます。ばねのように。手首は浮いた状態。指は腕から伝わってきた力を鍵盤に作用する役目なのでしっかり支えます。でもすべては流動的です。止まっていません。
    • 指の位置
      例えば小指は一番短く細く力がなさそうですが、骨の位置を腕の骨の延長の位置で使うとしっかり支えることができます。他の指も同じです。そのために手首は指につれて柔軟に対応していきます。長い指(肘からつながる)というイメージです。
      • 5本の指を均等に鍛える必要はあるのか?
        5本の指は長さ、太さ、付け根の位置(つまり手の重さをどの位反映するか)、独立度がそれぞれ違います。それを均等に弾くように訓練するのはとても大変です。普通、練習曲(特にハノンのようなもの)では指の均等を目標に置いています。でも音楽的に弾くイメージをきちんと持った場合、違った形の練習が有効になってきます。
    • 精神的な面とその方法
      脱力の話に戻りますが,脱力はテクニックだけでは無理な部分も持っています。緊張しているときとリラックスしているとき、どちらが脱力が容易でしょう。普段リラックスのできない人は内面の問題を抱えています。実はそれをとらないと本当には脱力ができないのです。私の場合は心理学のアバターコースを受け本当に心からのリラックスを経験でき、その素晴らしさに教えるためにライセンスも取得しました。詳しくはこちら

効率のよい練習方法

  • 練習曲は必要か
    前出ですが音を均一に弾く必要はないと考えると練習曲を無理に使う必要もないかと思います。練習曲も使い方次第ですが覚えていきたいのは体の使い方,関節などの動かし方なのです。
    却って無機質な練習は体をこわばらせ音を感じなくなる恐れがあります。
    イメージを持つことがとても大事でそれを音にできればよいのです。
    何でも弾ける指になったら何でも弾けるわけではありません。指が動いてもイメージがなければ音楽にならないのです。
    わたしは練習としては音階やアルペッジョを音の出し方に注意を向けながら練習する方法をとっています。
  • ゆっくり練習する意味
    早い反復練習は体をこわばらせるし、何も感じないで弾くくせがつきます。
    さてではまず何を感じますか?
    音の高低、跳躍、合った音ぶつかった音、音のあるところ音のない空白それだけでも感じるものはたくさんあります。メロディーやハーモニーにも集中してそのフレーズを脱力で練習します。
    集中しないようなら練習を中断することをおすすめします。

曲を弾くこと

  • 心に感じて
    ピアノの何が面白いかわからなくなってしまった方があって、この話を伝えました。

 音楽を心に感じるということは、漠然としたことではありません。
細かく見ていくとわかりやすいことだということに気がつきます。
音が動くとそこに心の動きが伴います。
2度で音がなったとき、音はぶつかって緊張感が生まれます。
7度でも同じですね。
それが3度の音へ動くと開放感があります。
まず感じてみてください。
咀嚼するようにゆっくり感じてみます。
 また一オクターブの動きはピアノですと片手で軽く動きますが、もし,一オクターブを歌ったらかなりの幅の音を移動したことがわかります。
その幅を感じます。
音が上へ動いていくとき、また下へ動くとき違う感じを持つと思います。
ドミソの和音がなったときド♭ミソの和音が鳴ったとき何を感じるでしょう。
そういった音の動きはたくさんありますが、音楽の中で見いだし感じながら弾きます。
次第に色々な発見をしていくでしょう。
 自分がその音を発見し感じて弾いたとき聞いている人もまたその音を感じます。
 その音を発見しても頭で考えただけではその音は伝わりません。
当たり前のようですがこれをすべて音楽へつなげていくには練習が必要です。
その音を感じながら弾く。
ゆっくり感じながら弾き、慣れたらテンポを上げていきます。
注意しないとテンポを上げたときに【感じ】は滑り落ちていってしまいます。

 「私,音楽は好きなのですけどわからないんです。」とおっしゃる方がとても多くいらっしゃいます。
音楽はただ感じていただけば良いと思います。
その上で知識を重ねたい方は重ねればそれなりの面白さも加わってくる世界だと思います。
でも感じて楽しむことがまず第一番にくるのではないでしょうか。

レッスンについて

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